近年日本でも増えつつある犬の幼稚園・保育園ですが、犬の幼稚園・保育園を開業するまでには必須となる条件もあり、行政手続きを含め、様々な手続きや申請が必要になります。
ドッグトレーニング関連の資格を持っていただけで開業することは基本的にはできません。また、手続きに不備があれば、せっかく準備をしていも開業、開店ができないこともあります。また、知らないことによる法律違反によって、事業の継続ができなくなる可能性もあります。
本記事では、犬の幼稚園・保育園開業までに必要な資格や手続き、準備の流れについて紹介していきます。
資格取得と資金調達

指定の資格取得が必要
後述する動物取扱業を取得するための要件として、各自治体で必要な資格を定めています。ドッグトレーナーが犬の幼稚園・保育園を開業する場合には、愛玩動物飼養管理士(1級・2級)、ペットシッター士、JAHA認定家庭犬しつけインストラクターを取得する方が多いのではないでしょうか。
参考:動物取扱責任者取得に指定されている資格の一例
・愛玩動物飼養管理士
・NPO法人日本ペットシッター協会
・JAHA認定家庭犬しつけインストラクター
まずは、ご自身が所有している資格が動物取扱業取得の条件に入っているかを確認しましょう。
参考:東京都の第一種動物取扱業 動物取扱責任者に必要な資格
東京都保健医療局 東京都動物愛護相談センターホームページ
開業資金と運転資金
事業用として物件を借りる場合、貸主に預ける保証金が発生することがほとんどです。家を借りる際の敷金と似たものとなりますが、保証金は毎月の家賃の2~10ヵ月分ほどになることが多く、時には100万円を越えることも珍しくはありません。
また、内装工事費や設備、備品の準備にも資金は必要です。
さらに、開店後すぐに売上、利益が安定しないことも珍しくはありません。毎月の家賃や光熱費、人を雇えば人件費など売上がなくてもこれらの費用は発生しますので、店舗を運営していく運転資金も開業資金と併せて事前に必要となります。
事前に開業したいエリアの家賃相場を把握し、必要な資金を用意しておきましょう。
事業計画書の作成

事業計画書とは、事業戦略や実行計画、売上、利益など、今後予定される数値計画を詳細に記載した文書を指します。資金調達をする際などに金融機関へ提出が必要になる他、物件を借りる際にも求められたりと、様々な場面で必要になります。
事業計画書作成の目的
事業計画書を作成する主な目的は以下の通りです。
- 事業の全体像や具体的な計画を把握する
- 事業の成功に至るまでの道筋を可視化する
- 金融機関に融資を申し込む際の提出書類として活用する
- 事業を客観的に見直し、改善のヒントを得る
- 社内または複数人で立ち上げる際、事業の共通認識を共有する
事業計画書の内容
事業計画書には主に以下のことを記載します。
- 創業の動機やビジョン
- 事業の概要(目的、提供するサービスや商品の料金、内容)
- 市場分析(市場規模、現状、ターゲット顧客)
- 事業戦略(販売、運営の計画)
- 戦略計画(売上予測、資金調達、コスト、損益)
- リスク分析と対策
参考:東京都で事業計画書作成の際に無料で活用できる機関
TOKYO創業ステーション
店舗物件探し

不動産会社に出向き、物件探しをします。インターネットでも物件閲覧は可能ですが、犬の幼稚園・保育園という日本においてはまだまだ特殊と言える事業を行うため、直接不動産会社に行き、事業説明及び希望条件を伝えた方が早い場合が多いと言えます。
明確にしておきたい希望条件
不動産会社に行く前に、主に以下の項目について希望条件を明確にしおきましょう。
- エリア
- 交通アクセス
- 家賃の予算
- 初期費用の予算
- 広さ・間取り
- 築年数
- 階数
- 2階以上であればエレベーターの有無
- 周辺施設の状況(例)動物病院・公園・トリミングサロンが近くにあるかなど
- 人通りや交通量
- 看板の設置や宣伝の自由度
- 電気・水道・ガス設備の有無
- 空調・換気設備の有無
- 駐車場の有無
- 契約期間や更新の条件
- スケルトンか居抜き物件か
- 犬の飼養がOKか
スケルトン物件と居抜き物件の違い
スケルトンとは、建物の骨組みである柱や梁、床、天井などの構造躯体だけを残した状態の物件を指し、コンクリートや配管、配線などがむき出しになっています。
スケルトン物件のメリットは、内装デザインを自由にできる、設備のメンテナンスがしやすい、什器の配置を自由にできるといったことが考えられます。デメリットは、費用や時間がかかることでしょう。
一方の居抜き物件は、前に入っていたテナントの什器や設備がそのまま残っている状態の物件を指します。
居抜き物件のメリットとしてはそのまま使用する場合にはコストを抑えることができます。ただし、自由なレイアウトやデザインが難しくなることや、内装やレイアウトを変える場合には、スケルトン同様に費用と時間がかかることがデメリットとして考えられます。
物件探しの注意点
まずは用途地域の確認です。用途地域とは、都市計画法に基づいて定められた土地の利用区分で、大きく分けて「住居系」「商業系」「工業系」の3つの区分に分類されています。
希望する物件が、犬の幼稚園・保育園を営業できるかを不動産会社またはインターネット、市区町村の窓口で確認した上で、物件の契約を進めましょう。
もうひとつは、保健所が定める必要な設備があるか、または設置が可能かどうかの確認です。東京都を例に見ると、洗浄設備、給水設備、排水設備、換気口が建物の設備として必要になります。
敬遠される犬の幼稚園
そもそも犬の飼養が許可されている事業用物件は住居用物件以上に少ないと思っておくといいでしょう。さらには、犬の幼稚園・保育園というあまり馴染みのない商売に加え、犬の吠え声や糞尿、犬独特の臭い、被毛などが舞うことを懸念されがちです。
不動産会社から物件のオーナーに掛け合ってもらえるよう、不動産会社に対して懸念されやすい事項に対してどのように対処していくかを説明できるようにしておくのがおすすめです。
内装イメージと内装業者の決定

物件が決まったら内装イメージと内装業者を決めていきます。この際、前述のように保健所が定める設備の設置が必要な場合は、漏れが無いようにしましょう。
内装イメージを決める際は、どんな雰囲気にしたいか、使いたい色などはあるか、扉や床材など幼稚園・保育園生たちの安全管理をする上で必要な設備などを考慮し決めていきます。
内装業者を決める際には、内装業者とのマッチングサイトなどがありますので、そういったサービスを利用し、ご自身に合いそうな業者を選んでもいいかもしれません。
参考:店舗の内装事例や業者とのマッチングサイト
店舗デザイン.com
第一種動物取扱業の取得

動物取扱業には、営利目的の第一種と非営利目的の第二種があります。犬の幼稚園・保育園を開業する場合には、第一種動物取扱業の取得が必須となります。
まず、動物取扱業者とは、犬の幼稚園・保育園、トリミングサロン、動物病院、動物愛護団体など、動物を取り扱う業務を行う事業者のことを指します。
第一種動物取扱業者
第一種動物取扱業者は、動物の販売、保管、貸出し、訓練、展示などを業務とする事業者です。対象となる動物は、哺乳類、鳥類、爬虫類です。
具体的には、犬の幼稚園・保育園、トリミングサロン、動物病院などが該当します。これらの業者は動物取扱業登録が義務付けられており、適切な施設と設備、必要な資格が求められます。
この第一種動物取扱業の登録申請には動物取扱責任者が店舗に一人が必須となります。
動物取扱責任者研修を受ける必要もあるため、開業予定の3か月前には一度保健所に問合せをしておくといいでしょう。物件が決まらないと進まないことも多いですが、今後何が必要かなども確認しておくと安心です。
ホームページの作成

お店を知ってもらうきっかけとなるホームページは今の時代はとても大切です。ホームページの内容や雰囲気次第でお客様に興味を持ってもらえるかどうかが決まると言っても過言ではありません。
ホームページの作成も専門業者に依頼することが多いと思いますが、どのようなイメージにしたいか、お客様に伝えたいことは何かなど、具体的に準備しておくといいでしょう。使用したい写真などがあれば予め用意しておきましょう。
ロゴ・チラシ・ショップカードの作成

ロゴはお店のイメージを表現し、あらゆるものに使われるものとなります。作成する場合は、イメージをある程度具体的にしておくとデザイナーさんなど専門業者に依頼する際もイメージが伝わりやすいでしょう。
チラシやショップカードを作成しないことももちろん可能ですが、店頭に置いておいたり、店の前を通ったた人に求められることも多くなりますので、特に開店してしばらくは渡せるように作成しておいてもいいかもしれません。
物品販売の検討・契約

店舗内でおもちゃやフードなど物品を販売する場合には、取扱う商品の選定と業者との契約が必要です。
物品販売に慣れていれば問題はないかもしれませんが、多くの業者から色々なものを仕入れて販売するのは管理が煩雑になり、メイン業務を圧迫することも考えられます。登園してくれる幼稚園生・保育園生たちや近隣の犬たちにどのようなものを提供したいかを考えながら、幼稚園・保育園のコンセプトに合ったものを厳選するといいでしょう。
卸売り業者やメーカーとの契約時には、店舗住所やホームページ、店舗外観写真などを求められることもあるため、店舗完成まで契約完了に至らないこともありますが、先にできるところまで話を進めておいた方が開店に間に合わせやすくなります。
人材募集

開店と同時に人を雇う場合には、予め人材募集が必要です。募集方法には求人サイト、店舗ホームページ、SNS、店頭での掲示など様々な方法があります。予算なども踏まえながら検討しましょう。
人材が確保できた場合には、労働時間や雇用形態、雇用人数によって保険や社内規則の作成など各種事務手続きが発生します。漏れがないよう手続きを進めます。
広告の検討・契約

広告にも様々なものがありますが、予算と見込めそうな効果を見極め、適したものを選びましょう。恐らく広告の営業電話は開店後何度もかかってくると思いますが、自分で探し、納得できるものを利用することをおすすめします。
また、主な機能は無料で利用できるGoogleビジネスを活用すると良いでしょう。Googleビジネスに登録すると、Google検索やGoogleマップなどにお店の情報を表示することができ、様々な人の目に触れやすくなります。
SNSの利用

今の時代はSNSからの集客も見込めます。InstagramやTikTok、Facebookなどお店のターゲット層に合ったものを開店前から開始し、活用していきましょう。
すぐにターゲットとなる飼い主さんと繋がることは難しいかもしれませんが、ホームページとはまた別の方法でお店を知ってもらうことができますので、犬の幼稚園・保育園に合った投稿やタグ付け、ストリーズなどを活用していくのがおすすめです。
税務署や法務局で各種手続き

もし、あなたが個人事業主として事業を行う場合は、事業開始から1ヶ月以内に開業届を納税地の税務署に提出します。
法人化をする場合には税務署のみならず役所や労働基準監督署、ハローワークなど状況によって様々な届出が必要になります。漏れの無いよう調べて対応しましょう。
税理士・社労士の検討
税理士や社労士など、店舗を運営していく上で各専門家の力を借りた方が間違いがなく安心ということもあります。お店の規模や状況に応じて検討してみてもいいでしょう。
保健所の立ち合い検査

店舗が完成したらオープン前に保健所の立ち合い検査が必要です。保健所の検査に通り、登録番号が発行されて営業可能となります。
立ち合い検査の前に、店舗内のレイアウト図面や書類を確認してもらった上で立ち合いに臨むとスムーズです。店舗内のレイアウトは、内装工事の依頼時にやっておくと必要な設備の漏れなども防ぐことができます。
ゴミ出しの確認

事業用のゴミは、一般家庭のゴミとは出し方が異なることがあります。店舗がある自治体のルールに沿ってゴミ出しをしましょう。ゴミの量によってはゴミ回収をしてくれる業者を探す必要があります。
保健所への申請と開業までの流れ
店舗を構えて犬の幼稚園・保育園を開店する場合は、前述のとおり第一種動物取扱業の取得が必要になります。その際、保健所への確認や手続き、立ち合い検査など適宜やり取りが発生します。大まかな流れは以下となります。
連絡・申請のタイミング | 確認事項 |
---|---|
不動産探し前(開業を決めた時) | ・第一種動物取扱業取得要件を満たし開業できるか ・今後必要な対応事項、流れ |
開業予定2~3ヵ月前 | ・動物取扱責任者研修の申し込み、受講 ⇒動物取扱責任者に登録 |
保健所の指示に従う | ・登録新規申請 |
不動産契約時(内装決定前) | ・店舗内配置の確認 ・必要設備の確認 |
保健所の指示に従う | ・施設の立ち合い検査の申し込み ⇒立ち合い検査の実施 ⇒第一種動物取扱業者の登録証が交付される |
営業及び広告活動開始 |
出張トレーナーとして開業する場合

犬の幼稚園・保育園の開業のおおまかな流れを紹介してきましたが、出張トレーナーとして開業する場合には、店舗を持たない分、対応事項は減ります。
第一種動物取扱業の取得は必要になります。ホームページ、チラシ作成、広告、SNSの運用などは行った方が顧客獲得に繋がりやすいですが、いずれにせよ開業までの道のりや必要資金は店舗を構える犬の幼稚園・保育園より一般的には少なくて済みます。
まとめ

おおまかな流れですが、犬の幼稚園・保育園の開業までには多くの時間と労力、そして資金が必要になることがおわかりいただけたでしょうか。
犬という大切な命を預かる場所となりますので、法律をしっかりと守り、安全面や衛生面も考慮したお店作りができると後々顧客の獲得、定着もしやすいのではないでしょうか。
今回紹介した流れの順番は状況や自治体によっても前後したり不要なことや他にも対応が必要なこともあります。各自治体の保健所に問合せをしたり、ホームページを確認し対応をしていきましょう。
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